令和7年第1回市議会定例会(令和7年2月21日)、櫻田宏市長は施政方針演説を行い、新たな年度に向けた決意を表明しました。
以下に演説の内容を全文掲載します。
はじめに
今冬は、記録的な豪雪に見舞われており、昨年末から本年1月中旬にかけての断続的かつ大量の降雪を受け、市では、これまでで初めて12月から市道の拡幅除雪や追従除雪を開始し、1月3日には裾野地区観測点の積雪深が163センチメートルと緊急体制基準を超えたことから弘前市豪雪対策本部を設置するとともに、幹線道路や準幹線道路、バス路線、通学路などを優先して、拡幅除雪や運搬排雪を行ってまいりました。年末年始から休みを返上して作業に当たっていただいている除排雪事業者には、心から感謝を申し上げます。
また、弘前市社会福祉協議会と連携した高齢者等を対象とする除排雪支援、りんご園地等の雪害対策としての幹線農道除雪の1か月以上の前倒しや、農業者による自主的な除雪を支援する補助金の増額、町会等が行う除排雪作業に係る燃料費や電気料の一部を支援する地域除排雪活動支援事業の申請受付延長など、きめ細かく、スピード感をもって対応してきたところであります。1月8日には、除排雪経費の確保に向け、総務大臣に面会し、特別交付税措置による財政支援の緊急要望を行いました。
降雪の状況は、1月17日には1月の市内の観測としては過去最大となる126センチメートルを記録し、2月に入っても寒波が続く非常に厳しい状況となっており、未だ予断を許さない時期でありますので、今後も市民生活に支障を来すことのないよう、しっかりと取り組んでまいります。
一方で、山や里に降り積もった雪は、やがて生活用水や農業用水として利用され、市民生活に潤いと恵みをもたらす源となるものであります。
私たちは、先般開催した弘前城雪燈籠まつりや、スキーなどのウインタースポーツ、地域毎に行われる雪上運動会や家庭での雪遊びなど、雪の楽しみ方も知っております。冬の厳しさがあるから、知恵を絞り、寒さを乗り越えて、雪に親しみ、雪を利用し、季節の機微を感じながら、雪と共に生活してまいりました。このことは、雪国に生きる私たちに、さまざまな課題に対応する柔軟性が備わっていることの現れであるものと考えております。雪に限らず、あらゆる地域課題と向き合い、その柔軟性と強い意志により克服し、強みに変えて、前進する。
市民の皆様と共に、ふるさと弘前の発展に向け、全力で立ち向かってまいります。
地方行政の運営の基本は、住民福祉の増進を図ることであります。
市民の声を聴き、受け止め、市民の目線で、市民感覚で市政運営に取り組んでいくことが重要であります。また、市民と共に歩み、市民が活躍できる場を作り、市民の納得感が得られるまちづくりを行うことが求められます。
昨年は、市民や企業等との協働により行った取組が脚光を浴び、そして、評価された年でありました。日本一の生産量を誇るりんごの生産基盤を維持していくことを目的として実施した、官民連携による援農ボランティアツアーでは、全国各地から多くの方々にご参加いただき、この取組が企業版ふるさと納税に係る大臣表彰及びディスカバー農山漁村の宝 優秀賞を受賞いたしました。また、障がい者等の就労や生きがいづくりの場を生み出すだけでなく、担い手不足や高齢化が進む農業分野における新たな働き手の確保が期待される、農福学連携の取組では、全国の自治体としては初めて、ノウフクアワード2024を獲得いたしました。
観光分野では、観光事業に携わる企業や団体と連携して開校したひろさきガイド学校の生徒や弘前大学の外国人留学生が、昨年の弘前さくらまつりにおいてインバウンドに対応した有償のガイドを開始しております。この取組も利用者から大変好評を得ており、国や全国各地の観光団体に先行事例として取り上げられるなど、非常に大きな関心を集めております。
これらはいずれも、市民との協働により、種をまき育ててきたものが実を結び、成熟し、豊かさとなって、地域に活気をもたらし、市内経済の循環にも寄与している好事例であります。
経済の語源は、「経世済民」、世の中を治め、人民の苦しみを救うことであります。従来の企業による経済活動に加え、新しい形による市民の活動が、まちの至る所から地域の経済を活性化させ、まち全体が元気を取り戻す。弘前の魅力を高め、弘前を知ってもらい、弘前に人を呼び込み、弘前の経済循環を促し、弘前に住んでいて良かったと感じられる、そういったまちづくりを市民と共に、今後も進めてまいります。
弘前市総合計画について
弘前市総合計画後期基本計画の3年目となり、市政の基軸に据えている「健康都市弘前」の実現に向けて、これまでの取組の成果をしっかりと意識し、引き続き分野横断で様々な施策を着実に展開してまいります。
県内唯一の「SDGs未来都市」、そして、昨年この場で宣言した「ゼロカーボンシティひろさき」、まちの様々な機能を高めながら、このまちに住む「ひとの健康」、人々の営みによってもたらされる「まちの健康」、その先の将来を担う「みらいの健康」を達成し、持続可能なまちづくりを目指します。
「ひとの健康」では、全ての市民が健康で長く活躍できるまちづくりを推進するため、QOL健診を次なるフェーズに押し上げます。
受診者に対し、岩木健康増進プロジェクトの研究成果などを生かした食事や運動に関する健康プログラムを提供することにより、脳血管疾患をはじめとした生活習慣病の原因となっているメタボリックシンドロームの予防・改善を図ります。
また、小・中学校児童生徒に配備した1人1台端末を活用し、子どもたちの心身の不調をチェックし、学校と保護者間の連絡手段をデジタル化する健康観察アプリや、市民の運動習慣の定着を支援する新体力テスト集計分析システムの導入などにより、子どもから大人まであらゆる世代の心身の健康増進を図ってまいります。
「まちの健康」では、快適で豊かなくらしを送れるまちづくりを推進するため、中心市街地を再生するとともに、弘前の強みを生かした足腰の強い産業を育成してまいります。
近年空洞化が進むまちなかの再生に向け、第3期中心市街地活性化基本計画の策定と、まちの賑わいを取り戻すための施策に取り組みます。また、現在策定を進めている、県内外からの新たな企業進出と地元企業の事業拡大支援に向けた企業立地戦略プランに基づき、新たな産業集積団地の整備を進めてまいります。
令和7年は、昭和元年から数えて100年となる節目の年であります。これを好機と捉え、昭和が色濃く残る当市の歴史や文化的資源を国内外に発信するとともに、観光振興に係る財源を安定的に確保していくため、宿泊税の導入環境を整えてまいります。
このほか、2050年までのカーボンニュートラル達成に向け、新たに「ゼロカーボンシティひろさき推進協議会」を立ち上げ、市民、事業者、行政など産学官民金が一体となった脱炭素社会の実現を目指します。
「みらいの健康」では、地域の未来を担うひとづくりを推進するため、子どもたちの学習環境の整備などに取り組みます。
老朽化が進んでいる城北公園交通広場について、子どもたちの交通安全教育の質の向上を図るほか、市民が利用しやすく、また観光客の集客も見込める施設となるようリニューアルするとともに、自転車通学が始まる中学生を対象とした通学用ヘルメットの購入支援や、児童館・児童センターのトイレ環境の整備などを進めてまいります。
また、青森りんご植栽150周年を記念し、日本一のりんご生産地を次の世代に継承するための人材育成や情報発信を強化するとともに、町会や市民団体等への活動支援を拡充するなど、地域課題に取り組む人材の更なる育成につなげてまいります。
市といたしましては、健康都市弘前の実現に向けて、あらゆる分野にわたる施策を着実に展開していくとともに、市民や事業者との協働、国や県、圏域市町村との連携をこれまで以上に強化し、市民の皆様が将来にわたって住み続けたいと思えるまちづくりに、総力を挙げて取り組んでまいります。
令和7年度予算案
令和7年度予算案は、「ひとの健康」、「まちの健康」、「みらいの健康」の3本の柱に基づいたまちづくりの更なる推進を図るほか、世界共通の課題であるSDGsの普及啓発、「ゼロカーボンシティひろさき」宣言の達成のための市民や民間企業が気軽に参加できる仕組みづくり、青森りんご植栽150周年を記念し、次の100年に向けて、りんご産業がもたらす恩恵を改めて実感してもらい、当市の基幹産業として持続的に発展させていくための取組に重点を置き編成いたしました。
当市では初となる成果連動型民間委託契約方式、いわゆるPFSの導入により、QOL健診と、その結果を改善する健康プログラムの提供に取り組む「弘前版PFS/SIBモデル事業」を3か年計画で、最大1億8千万円規模で実施し、成果にこだわった持続可能なシステムとしての定着を目指してまいります。
このほか、住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、いわゆる終活の場面において、身寄りのない高齢者等の相談を受け、身元保証を代替するサービスなどを提供する体制を整える「終活支援体制整備事業」に500万円を、城北公園交通広場をリニューアルする「交通広場再整備事業」に1千711万6千円を計上しております。
また、「SDGs普及啓発事業」に337万8千円、「ゼロカーボンシティ推進事業」に307万2千円、「りんご植栽150周年記念事業」に528万円を計上するほか、昭和改元100年を記念し、弘前さくらまつりや弘前ねぷたまつりなどのイベントにおいて、昭和を連想させる装飾やコンテストを実施する「あの頃ひろさき記念事業」に313万6千円を計上いたしました。
人口減少、少子高齢化が進展する中で、自治体運営は依然として厳しい状況に置かれております。
物価上昇による燃料費や原材料費の高騰、人手不足による人件費の増大など、さらに厳しい状況が続くと思われます。
そうした中で、高度経済成長期に整備をした社会インフラが老朽化し更新時期を迎えており、先般の埼玉県八潮市のような痛ましい事故も発生しております。
能登半島地震など自然災害が全国各地で激甚化、頻発化しており、また、当市においても、線状降水帯の発生による大雨や、今冬のドカ雪、豪雪。
こうしたことへの対応も含めて、低所得者世帯や子育て世代への給付だけではなく、全ての市民に対しての住民福祉の向上が基礎自治体の使命であります。
令和7年度の一般会計当初予算は、令和6年度の当初予算と比較すると55億9千万円、率にして6.8パーセントの増となりましたが、市民生活を維持させていくための施策と、厳しい財政状況が続く中でも健康づくりのまちなか拠点の整備や第二中学校、桔梗野小学校など、子どもたちの学びの環境整備も進めていくこととしております。
「ひとの健康」「まちの健康」「みらいの健康」この3本の柱で健康都市弘前の実現に令和7年度も邁進してまいりますので、皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。
それでは、各会計の予算規模等について申し上げます。
令和7年度の一般会計予算の総額は、883億7千万円となっております。
歳入予算の款別の構成比では、市税が205億1千201万4千円で、23.2パーセント、地方交付税が198億4千万円で、22.5パーセント、国庫支出金が174億3千191万3千円で、19.7パーセントとなっております。
歳出予算の款別の構成比では、民生費が354億6千214万6千円で、40.1パーセント、総務費が127億6千886万5千円で、14.4パーセント、教育費が85億4千650万5千円で、9.7パーセントとなっております。
歳出予算の性質別の構成比では、扶助費が249億6千876万3千円で、28.3パーセント、物件費が137億8千731万2千円で、15.6パーセント、普通建設事業費が118億3千867万7千円で、13.4パーセントとなっております。
次に、各特別会計、企業会計予算について申し上げます。
特別会計では、効率的・合理的な事業運営に努めることとしており、企業会計におきましても、効率的な経営に努めることとしております。
国民健康保険特別会計予算は、185億2千607万1千円で、令和6年度に比べ、7億2千209万8千円、3.8パーセントの減となっております。
後期高齢者医療特別会計予算は、25億1千910万8千円で、令和6年度に比べ、6千897万8千円、2.7パーセントの減となっております。
介護保険特別会計予算は、197億5千82万4千円で、令和6年度に比べ、11億597万1千円、5.3パーセントの減となっております。
水道事業会計予算は、収益的収支において、収入が46億8千558万8千円、支出が39億1千916万2千円で、資本的収支では、収入が40億6千115万7千円、支出が67億1千630万9千円となっております。
下水道事業会計予算は、収益的収支において、収入が57億5千786万8千円、支出が53億7万8千円で、資本的収支では、収入が22億7千577万円、支出が46億1千963万7千円となっております。
終わりに
以上、令和7年度の市政運営に関する所信の一端及び予算大綱について述べてまいりました。
コロナ禍を経て、私たちは健康であること、そして、安心して日常生活を営むことができることの尊さを実感いたしました。
近年の社会環境の大きな変化に伴い、中心市街地では明治の時代から営業を続けてきた老舗菓子店や、まちのシンボル的な存在であった百貨店の閉店、日用品等の買い物を支えてきた大型スーパーの撤退など、幕が閉じられる場面に直面することも経験いたしました。
一方で、閉じた幕を再び開き、第二幕、第三幕に向けて歩みだすという動きも見られており、今こそピンチをチャンスに変えていかなければなりません。藩政時代以来、400年以上の長きにわたる弘前の歴史においても、様々な困難を乗り越え、現在のまちが築かれてきております。今の時代を生きる私たちも、先人たちの歩みを止めることなく、次の世代に引き継いでいく必要があります。
市政運営の最上位計画である弘前市総合計画は、令和8年度までを計画期間としており、本年から次期計画の策定準備に着手いたします。高校生や大学生等の若年層も含め幅広い世代の声を聴き、その意見や提案を最大限に反映させた計画となるよう努めてまいります。
20年、30年先、そしてさらにその先を見据え、市民の皆様がこれからの弘前をどのようなまちにしたいのか、そのまちの姿をこの津軽の広い天空を幕として描き、そして、大地に悠然と腰を据えるが如く「幕天席地」の気概をもって将来を展望し、ふるさと弘前の持続的発展を図っていく。
弘前市長として常に念頭にあるのは、「市民生活を第一に」であります。市民生活を守るため、市民の期待と信頼に応えるため、力の限り全身全霊で市政運営に邁進してまいりますので、市民の皆様並びに議員各位におかれましては御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
担当 法務文書課
電話 0172-40-0205