令和8年第1回市議会定例会(令和8年2月20日)、櫻田宏市長は施政方針演説を行い、新たな年度に向けた決意を表明しました。
以下に演説の内容を全文掲載します。
弘前。ここには、津軽の奥深き精神が脈々と息づいております。藩政時代から続く時の流れの中、北国の厳しい風雪に耐え、自らの姿を変えぬまま、しかし、常に新しい息吹を宿しながら生き抜いてきた城下町、それが、私たちの街、弘前であります。
雪深い冬が明ける頃、私たちは、希望に満ちた春の訪れを喜び迎えます。壮麗に咲く満開の桜は、圧倒的な迫力で観る人全てを魅了し、やがて惜しげもなく無数の花びらを風に乗せ、街を優しく包み込むのです。弘前の桜は、幾重にも時を重ね、人々の想いを乗せて咲き継がれてきた、市民の象徴とも言うべき特別な存在であります。その美しさは、どれだけの言葉を尽くしても足りないと思えるほど、私たちの心を捉えて離しません。
夏の盛りには、地鳴りのような太鼓の音が響き渡り、人々の胸を高鳴らせます。勇壮に連なった大小様々のねぷたが夜の闇を切り裂き、幻想的な光を放つその姿には、長い冬の間蓄えたエネルギーを一気に爆発させる津軽衆の精神が確かに脈打っており、祭りを通して、先人たちが遺した津軽の誇りを、次の世代へと繋ぎます。
岩木山がその雄大な姿に錦を纏う頃、優雅な秋の装いとなります。燃えるような紅葉、澄み切った秋空、そして大地がもたらす豊かな実り。この地が育んだ農作物は、天与の恵みであり、自然への深い感謝の念の表れでもあります。私たちはこの恩恵を尊び、来たるべき冬に静かに備えます。
そして再び、白銀の世界が訪れ、街全体を深い雪が覆い尽くし、全ての音を吸い込むように静寂が支配します。弘前城は、雪化粧をまとい気高く佇む。この厳しい冬こそが、私たちを鍛え上げ、津軽の魂を深く宿らせた原点なのでしょう。逆境にも決して屈することなく、自らの道を知り、真っ直ぐに生き抜くその気質は、この地の自然と共に、今日まで連綿と受け継がれてまいりました。
単なる風景の美しさを越えた、深遠なる歴史と、それに培われた私たち市民一人ひとりの人生が、この街には確かに息づいております。四季折々に表情を変える弘前の美しさは、津軽の人々の心の綾そのもの。風雪に鍛えられながらも、決して折れることのないその矜持こそが、この城下町を四百年もの間、輝かせ続けてきた原動力であります。
多くの先人たちが、弛まぬ努力と知恵を注ぎ、私たちに現在の豊かなこの弘前を残してくれました。私もまた、長い歴史に裏打ちされた文化、そして市民の暮らしを未来へと繋ぐため、これまで全力を傾けてまいりました。この地で生まれ育ち、このまちの未来に思いを馳せてきた私にとって、市長という職務は最大の誇りであり、使命であります。2期8年間、私は市民の皆様の信頼を背に、市政運営に取り組んでまいりました。
市長に就任した平成30年から今日までの間にあっても、私たちを取り巻く社会は、想像をはるかに超える速さで変貌を遂げてきました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の経験は私たちの生活様式、経済活動、そして、人との繋がりのあり方にまで大きな影を落としました。同時に、AIをはじめとするデジタル技術の爆発的な進化は、社会のあらゆる側面に変化をもたらし、情報化の波は日々高まっております。
不安定な国際情勢、深刻化する地球環境問題についても、私たちの日常に、物価高騰や自然災害の激甚化・頻発化など、具体的な影響を与えています。そして、何よりも、人口減少と少子高齢化はかつてないスピードで進行し、地域社会のあり方を根底から問い直す大きな課題として、常に私たちの前に立ちはだかっています。
しかしながら、この激動の時代においても、私たちは、決して立ち止まることなく、一歩一歩、確実に歩みを進めてまいりました。市民の皆様と共に汗を流し、知恵を出し合い、それぞれの課題に応じてきめ細かく丁寧に対策を講じてきたと自負しております。時には困難に直面し、思うように物事が進まないこともありました。しかし、その都度、市民の皆様の声に耳を傾け、地域の力を結集することで、これまで乗り越えてきた数々の実績が、今の弘前市を支えております。
この歩みは、まさしく市民の皆様との「協働」の証であり、私自身が大切にしてきた「市民目線」での市政運営の軌跡であります。20年、30年先を見据え、この弘前をいかに次世代に引き継いでいくか。その問いかけと向き合いながら、まちづくりを進めていかなければなりません。
平成31年3月に策定した弘前市総合計画は、令和8年度をもって計画期間の最終年度を迎えることとなります。
将来都市像である「みんなで創り みんなをつなぐ あずましいりんご色のまち」の実現に向け、基本方針として、「市民の『いのち』を大切にする、市民の『くらし』を支える、次の時代を託す『ひと』を育てる」という3つの柱を掲げ、この基本方針に基づき、子育て、健康・医療、農林業、観光など、16の分野にわたり多様な施策を着実に展開してまいりました。
令和元年度から令和4年度までの前期基本計画において、「いのち」の分野では、弘前市民だけでなく津軽地域に暮らす方々にも、長期にわたる安心安全で良質な医療を提供すべく、青森県の地域医療構想に基づき、旧弘前市立病院と旧国立病院機構弘前病院を統合し、令和4年4月に弘前総合医療センターを開設しました。
これに伴い閉院した旧市立病院跡地には、市民の健康寿命の延伸と中心市街地の賑わい創出につなげるため、健康・医療・福祉分野を中心に多世代交流や多様な学びなどの機能を集約した「健康づくりのまちなか拠点」を整備することとし、現在、その供用開始に向け着々と準備を進めております。
このほか、医療分野の研究開発を促進するため、いわゆる次世代医療基盤法に基づき、令和3年5月に、全国で初めて一般財団法人日本医師会医療情報管理機構と医療情報の提供契約を締結しました。これにより、現在、弘前大学などにおいて、医療・健康につながる研究が活発に行われているところであります。
「くらし」の分野では、導入が予定されていた「家庭系ごみ指定袋制度」を中止し、ごみの減量化・資源化を市民運動として推進しました。その結果、令和7年度末の目標として設定した1人1日当たりの家庭系ごみの排出量670グラムを、令和5年度に2年前倒しで達成しております。これはまさに、市民力の結集の賜物であります。
基幹産業である農業においては、農作業の省力化・効率化のための農業機械の導入や荷捌き場等の整備に対する補助、複合経営による災害等に強い産地の形成を目指すためのワインぶどうの栽培促進に取り組んでおります。このほか、就農希望者に対する里親農家による農業研修、地域定着・農地取得等の支援、農福連携の推進など様々な対策により、農業経営の安定化、円滑な就農と定着を促し、生産基盤の維持・強化を図っているところであります。
「ひと」の分野では、児童生徒が安心して快適な学校生活を送ることができるよう、令和元年度に県内でいち早く、全ての小・中学校の教室や保健室等へエアコンを設置しました。さらに、令和7年度までの施工を予定していたトイレ改修及び洋式化工事を、国の財源を活用しながら、5年前倒しとなる令和2年度に完了させています。
学びの環境整備を進めるため、GIGAスクール構想の下、児童生徒1人1台の端末を配備したほか、小・中学生等が地域産業に直接触れることによる職業観の醸成に取り組んでおります。さらに、「ひろさき未来創生塾」の開設や、大学生による「まちなかキャンパスプロジェクト」、「高校生 放課後まちづくりクラブSTEP」の実施など、若者が地域社会と関わり、弘前の魅力や特性を感じる機会を創出することで、将来の弘前市を担う人材を育成しています。
多様性を尊重するまちづくりを推進するため、東北地方の自治体としては初めてとなる性的マイノリティの方々を対象としたパートナーシップ宣誓制度を令和2年度に導入し、一人ひとりが互いを尊重しあい、心豊かに暮らせるまちを目指すこととしております。
令和5年度から令和8年度までの後期基本計画におきましては、それまでの4年間の経験を活かし、市民活動や地域経済に強く影響を与えた新型コロナウイルス感染症の感染拡大を経て、市民の健康を希求する心に応える必要があるとの思いに至りました。このため、「全ての市民が健康で長く活躍できるまちづくりに取り組む『ひとの健康』、快適なくらしを送れるまちづくりに取り組む『まちの健康』、地域の未来を担うひとづくりに取り組む『みらいの健康」』」を3本の柱とする「健康都市弘前の実現」を市政の基軸に据え、各種施策を展開してまいりました。
「ひとの健康」では、家計にとって突発的な負担となる子ども医療費について、令和5年4月から所得制限を撤廃し、18歳となる年度末までの保険診療分に係る医療費を完全無償化しました。さらに、新生児の聴覚障がいを早期に発見し、療育を図るため、その聴覚検査費用の一部助成を実施するなど、安心して子育てできる環境を一層充実させております。
弘前大学との連携体制を強化し、健康寿命の延伸に向け、「岩木健康増進プロジェクト健診」のビッグデータを活用したQOL健診の普及展開を進めております。さらに、メタボリックシンドロームの予防・改善を目的にQOL健診と併せて食事や運動に関する健康プログラムを提供するなど、成果を意識しながら長年の課題に立ち向かっているところであります。
このほか、児童生徒の心身の不調をチェックし、学校と保護者間の連絡手段をデジタル化する健康観察アプリや、運動習慣の定着を支援する新体力テスト集計分析システムを導入し、子どもの心身の健康増進を図っております。
「まちの健康」では、県内外からの新たな企業進出と地元企業の事業拡大支援に向け、令和7年3月に企業立地戦略プランを策定いたしました。このプランに基づき、新たな産業集積団地の整備に取り組んでいるほか、将来の市内経済を牽引する革新的なビジネスモデルを生み出すため、独自技術などを活用し、急速な成長を目指す事業者を支援しております。
近年空洞化が進む中心市街地の再生に向け、令和8年度中に第3期中心市街地活性化基本計画を策定する予定としており、現在、幅広い世代・分野の方々から意見やアイデアを聴取しているほか、各種団体や関係者とも議論を重ねております。かつての商店街の姿を取り戻すことにこだわることなく、多様化する地域課題や市民ニーズに対応し、弘前の強みや特性を生かしながら、まちなかの賑わいを生み出すための取組を積極的に行ってまいります。
雪対策につきまして、今冬は、昨冬の除排雪体制を維持しつつ、町会との協働除雪、SNSを活用した情報収集、除雪開始時刻の見直しに加え、「雪に関する市民電話」、「農道除雪窓口」の開設などの新たな対策を講じております。さらに、地域の雪処理における担い手不足解消につながることが期待される、民間のマッチングサイトを介した有償の雪処理サービスの普及をサポートするなど、市民と事業者、行政が連携し、地域力を結集した協働による持続可能な雪対策を着実に実行してまいります。
「みらいの健康」では、小・中学校の全児童生徒へのAIドリルの導入支援や校舎の改築、暖房機器の更新を行い、意欲的に学習に取り組める環境を整備しています。また、児童館・児童センターへのエアコン設置やトイレ洋式化も進め、児童が安全に安心して過ごせる居場所の確保に努めております。
令和7年8月には、学校と公民館、児童館などの公共施設が一体となった、石川小・中学校等複合施設の全面供用を開始しました。学校が地域住民の生活や活動の拠点となり、地域とともにある学びと交流、にぎわいを創出する学校づくりのモデルケースとなっております。
将来的に観光ガイドを生業とすることができる人材を育成するため「ひろさきガイド学校」を令和5年7月に開校したほか、弘前大学が有する知見を活かしながら、地域を担う観光人材の育成を強化しているところであります。
各自治体・各地域が有する資源を有効に活用するためには、広域的な視点での対応が不可欠であるとの考えに基づき、周辺市町村と幅広い分野で連携を深め、様々なプロジェクトを手掛けてまいりました。弘前総合医療センターの開設をはじめ、弘前圏域権利擁護支援センターの運営、「クランピオニー津軽」による観光地域づくり、道南地域・北東北3県が連携した観光圏の形成、圏域8市町村による国土強靱化地域計画の推進、ごみ処理に係る一部事務組合の統合など、多岐にわたり広域行政を推進しております。
「健康都市弘前」の実現、そして将来都市像の実現に向けて、引き続き分野横断で果敢に挑んでいく姿勢を堅持し、市民との協働、そして国や県、周辺市町村との連携を強化しながら、総力を挙げて、市民の皆様が「将来にわたって住み続けたいと思えるまちづくり」を進めてまいります。
次に、令和8年度予算案についてご説明申し上げます。
本年4月の市長選を控え、予算は骨格予算としたものの、弘前市総合計画の最終年度であることを十分に踏まえた予算といたしました。
物価高対策としては、令和7年度弘前市一般会計補正予算第14号において計上したプレミアム商品券発行事業に加え、令和8年度も市内中小企業等に対する賃上げ応援奨励金交付事業を継続するなど、切れ目なく支援いたします。
弘前城天守曳き戻しは、国内外への積極的な情報発信や関連イベントの開催等を通じて交流人口の拡大を図るなど、111年ぶりの世紀の大事業としてやり遂げます。
中心市街地の「再生」による地域経済の活性化、農業経営の安定化と持続可能な農業の推進、安心・安全な市民生活を確保するための除排雪対策、弘前大学COI-NEXTとの連携強化などによる健康寿命の延伸、次代のひろさきを担う人材の育成など、市政の基軸に据えている「健康都市弘前の実現」に向けたこれまでの集大成となるよう、力を注いでまいります。
それでは、令和8年度における各会計の予算規模等について申し上げます。
令和8年度の一般会計予算の総額は、862億9千万円となっており、令和7年度に比べ、20億8千万円、2.4パーセントの減となっております。
歳入予算の款別の構成比では、市税が213億1千22万円で、24.7パーセント、地方交付税が204億8千万円で、23.7パーセント、国庫支出金が173億9千769万円で、20.2パーセントとなっております。
歳出予算の款別の構成比では、民生費が356億4千54万3千円で、41.3パーセント、教育費が92億4千191万9千円で、10.7パーセント、総務費が88億7千244万6千円で、10.3パーセントとなっております。
歳出予算の性質別の構成比では、扶助費が251億697万3千円で、29.1パーセント、物件費が133億6千217万4千円で、15.5パーセント、人件費が110億9千47万2千円で、12.8パーセントとなっております。
次に、各特別会計、企業会計予算について申し上げます。
特別会計では、効率的・合理的な事業運営に、企業会計におきましても、効率的な経営に努めることとしております。
国民健康保険特別会計予算は、178億5千841万1千円で、令和7年度に比べ、6億6千766万円、3.6パーセントの減となっております。
後期高齢者医療特別会計予算は、29億2千603万6千円で、令和7年度に比べ、4億692万8千円、16.2パーセントの増となっております。
介護保険特別会計予算は、200億7千15万7千円で、令和7年度に比べ、3億1千933万3千円、1.6パーセントの増となっております。
水道事業会計予算は、収益的収支において、収入が44億4千420万3千円、支出が42億1千327万6千円で、資本的収支では、収入が15億8千775万6千円、支出が32億9千87万3千円となっております。
下水道事業会計予算は、収益的収支において、収入が58億6千827万1千円、支出が55億2千277万5千円で、資本的収支では、収入が16億537万2千円、支出が39億2千340万5千円となっております。
以上、令和8年度の市政運営に関する所信の一端及び予算大綱について述べてまいりました。
論語の一節に「士は以もって弘毅ならざるべからず。任重くして道遠し。」という言葉があります。重い責任を担い、遠大な道のりを歩む者の心構えを説いています。まさしく、私自身、弘前市の未来を担う重責を感じるとともに、その道のりの険しさを自覚しております。
しかし、私は、これまでの経験と実績、そして何よりも市民の皆様との信頼関係を礎に、この重い責務を全うする覚悟であります。守るべきものは大切に守り、そして変えるべきは臆することなく変えていく。四百年の歴史が培った弘前の力を信じ、未来に向かって、力強く歩んでまいります。
これまでも、これからも、市民の皆様お一人おひとりの生活がより豊かになることを目指してまいります。それは、市役所だけ、議会だけでは決して成し遂げられるものではありません。市民の皆様の力を結集させることが不可欠です。
日々の生活の中で感じた疑問や市政に対する意見を積極的に寄せていただくこと、地域のためにできることを考え、自ら行動していただくこと、それら全てが、弘前市を動かす大きな力となります。
変化の時代だからこそ、未来を見据え、弛まぬ努力を続ける必要があります。
20年後、30年後、私たちが愛するこの弘前が、子どもたちや孫たちの世代に、さらに輝かしい姿で引き継がれるよう、皆様と共に知恵を出し合い、力を合わせ、新しい弘前の歴史を刻むため、市政運営に全力を尽くす所存であります。市民の皆様並びに議員各位におかれましては、御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
担当 法務文書課
電話 0172-40-0205