令和3年度より、弘前城跡(弘前公園)内にある国の重要文化財・弘前城二の丸南門および三の丸追手門の修理工事を実施しています。2つの城門の工事内容は、現在の基準を満たす耐震化や、銅瓦葺(どうかわらぶき)屋根のふき替えなど、ほぼ同じです。令和3年9月から本格的な現場作業に入り、同年11月上旬には仮設足場を設置しました。各修理を経て、令和4年12月に修理完了する予定です。
令和3年度 弘前城二の丸南門および三の丸追手門の修理状況・内容はこちら
12月19日(月曜日)、三の丸追手門での仮設足場撤去が概ね終了しました。1年ぶりに、追手門の外観が姿を現しました。
▽1年ぶりに姿を現した三の丸追手門[令和4年12月19日]
三の丸追手門では、9月から進めてきた耐震補強工事が大詰めを迎えています。耐震補強工事の内容は、地下への鉄筋コンクリートウエイト設置と、建物への筋違い(すじかい)補強です。鉄筋コンクリートウエイトは追手門の「おもり」となり、突風や竜巻などで追手門が浮き上がるのを防いでくれます。筋違いについては元から付いていましたが、強度不十分と判定されたため、元々あった筋違いに追加する形で新しいものを設置しています。また、屋根修理等に関しては、市長・副市長が現地で状況を確認しました。
▽地下に埋設する鉄筋コンクリートウエイトの配筋状況[令和4年9月28日]
▽鉄筋コンクリートウエイトと追手門の連結部[令和4年11月24日]
▽新規の筋違い設置状況[令和4年11月9日]
▽新規筋違いの焼印[令和4年11月9日]
▽新規の筋違いを化粧板で隠す[令和4年11月24日]
▽追手門最上部で屋根や鯱(しゃち)の修理完了を確認する市長・副市長
[令和4年11月30日]
11月8日(火曜日)より二の丸南門の仮設足場を撤去し始め、一週間ほどで作業を終えました。1年ぶりに、二の丸南門の外観が姿を現しました。
▽仮設足場のシート撤去中(令和4年11月8日)
▽仮設足場撤去中(令和4年11月14日)
▽仮設足場撤去完了(令和4年11月16日)
二の丸南門では、補修を終えた鯱を屋根上に戻しました。
▽二の丸南門 南側の鯱 補修完了状況
▽動画 二の丸南門 南側の鯱設置作業
二の丸南門では、壁に白漆喰を塗る作業を進めています。まず、古い漆喰をはがす際に生じた土壁の凹みを白漆喰で埋め、それが乾いて壁が滑らかになった後、本格的な漆喰塗りに着手します。
▽土壁の凹みを白漆喰で埋める[凹み周辺にだけ、先に白漆喰を塗っておく]
▽動画 壁の白漆喰塗り作業[二の丸南門北側の内壁]
▽壁の白漆喰塗り作業
三の丸追手門では、補修の終わった乳金物を元の位置に取り付ける作業を進めています。乳金物とは、釘隠しとして打ち付ける装飾の金物のことで、弘前城跡の城門では扉や正面の柱に見られます。元々城門に付いていた乳金物を取り外して錆を落とし、錆止めの漆塗りをして元の位置に戻しています。
▽動画 乳金物の取り付け[三の丸追手門の東側扉板]
▽扉の乳金物の取り付け状況[東側扉板の正面]
▽柱の乳金物取り付け状況
三の丸追手門の保存修理工事では現在、新たに木彫りの鯱を作る作業に入っています。元々追手門の屋根上にのっていた東側の鯱は、過去に修理されていたものの腐食が進み修理不可能な状態だったため、今回新しく作り直すことになりました。新たな鯱には、古い鯱と同じく杉材を用いて、同規模・同形状に彫り出します。
▽杉の角材に鯱の下絵を描く
▽既存の鯱の頭(上)と、新しく彫っている鯱の頭(下)
二の丸南門では、5月下旬より進めてきた鉄製金具補修の仕上げに入っています。これまでの作業の流れを、北側扉板上方の入八双金物(いりはっそうかなもの)を例に、時系列で振り返ってみましょう。この金物は錆(さび)付きが進んでおり、まず錆を削り落とし、錆止めを混ぜた漆を2回塗った後、3回目として純粋な漆を重ね塗りしました[中塗り]。その後、中塗りの表面を軽く削って凹凸を調整し、仕上げの漆を塗って金具補修が完成します[上塗り]。
▽令和4年5月下旬 錆(さび)落とし開始
▽動画 錆落とし
▽令和4年7月中旬 錆落とし終了[右端の蝶番(ちょうつがい)部分には漆を塗布済]
▽令和4年7月中旬 1回目の漆塗り作業[錆止め入り]
▽動画 1回目の漆塗り作業
▽令和4年8月上旬 2回目の漆塗り作業[錆止め入り]
▽令和4年8月上旬 3回目の漆塗り状況[純粋な漆・中塗り]
▽令和4年8月下旬 仕上げの漆を塗る前に、表面を削って凹凸を調整
▽令和4年8月下旬 仕上げの漆塗り作業[上塗り]
▽動画 上塗り
8月6日(土曜日)・7日(日曜日)の2日間、第1回「弘前城跡の史跡・文化財」見学修理体験会を開催しました。見学・体験メニューのうち、三の丸追手門工事現場見学には110名、二の丸南門工事現場見学には156名、二の丸南門屋根材の色合わせ体験には265名の参加がありました。
▽弘前城三の丸追手門工事現場見学
▽弘前城二の丸南門工事現場見学
▽二の丸南門屋根材の色合わせ体験
二の丸南門では、5月下旬から錆落としをしていた鉄製金具に漆を塗る作業が始まりました。鉄製金具のうち、錆付きが顕著だったものについては、長持ちするようフッ素を塗布した上で漆を塗ります。漆塗り作業には専用のハケを使い、職人は塗りムラができないよう均一に、丁寧にハケを動かしていきます。
また、7月からは二の丸南門にて銅板を巻いた状態の鯱(しゃち)、三の丸追手門にて鬼板の展示が始まりました。
▽錆落とし中の鉄製金物[二の丸南門北側扉上方の入八双金物](令和4年5月下旬)赤錆の下に、光沢のある黒色面。
▽錆落とし後の鉄製金物[二の丸南門北側扉上方の入八双金物]右端の蝶番(ちょうつがい)部分には漆を塗布済。
▽漆塗り作業[二の丸南門北側扉上方の入八双金物]
▽二の丸南門7月展示 銅板を巻いた状態の鯱(しゃち)
▽三の丸追手門7月展示 鬼板
二の丸南門および三の丸追手門では、上層屋根の下地木部の補修を終え、銅板を葺き直す作業が始まりました。二の丸南門では上層屋根の東面から作業に入っており、屋根頂部の「大棟(おおむね)」と屋根軒先には既存の銅板を残し、その間の平板・瓦棒(かわらぼう)部分では新しい銅板(新材)に交換して葺き直しています。今回は上層屋根のみを葺き直すため、修理しない下層屋根との違和感が出ないよう、あらかじめ新材の色合せをしています。
また、6月には二の丸南門および三の丸追手門において、鯱(しゃち)の下地木部の展示を行いました。普段は遠く見上げることしかできない鯱ですが、間近で見るとその大きさを実感できます。7月からは、銅板を巻いた状態の鯱や鬼板に展示替えをする予定です。
▽新しい銅板の葺き替え状況[二の丸南門上層屋根の北東隅]軒先の巴部分は既存銅板の再利用、それより上は新材。
▽銅板の葺き替え状況[二の丸南門上層屋根の東面]軒先の巴部分と大棟には既存銅板を残し、その間に新材を葺く。
▽鯱(しゃち)下地木部の展示状況[二の丸南門]
さくらまつり中は休工していた二の丸南門・三の丸追手門の保存修理工事ですが、5月の連休明けより工事を再開し、5月下旬には金具の錆落とし作業に入りました。
城門には、扉の取り付け部分や装飾に鉄製金具が用いられています。それらの金具の中には、長い年月を経て失われたり、錆びついて傷んだりしているものがあるため、今回の工事で補修します。
錆落としの前に、金具の周りを和紙・テープで養生し、周囲の木部を傷付けないようにします。その後、金具の表面を金属タワシやグラインダーで磨いていきます。最初は粒の大きな砥石(といし)で粗く錆を落としますが、だんだん粒の細かい砥石に替えて表面を丁寧に磨いていきます。
▽金具周りを和紙で養生[二の丸南門南側扉板・釘隠しの乳金物] 木部表面の剥がれを防ぐため。
▽和紙の上に養生テープ貼り付け[二の丸南門の北側扉板] 金物の研磨中に木部を傷付けないため。
▽錆落とし開始[二の丸南門北側扉上方の入八双金物] グラインダーで研磨し、金具表面の赤錆を落とす。
▽錆落とし中[二の丸南門北側扉上方の入八双金物] 表面の赤錆を取り除くと、光沢のある黒い面が見えてくる。
令和3年度より保存修理工事を進めている重要文化財・弘前城二の丸南門および三の丸追手門では、令和4年4月より、仮設足場を覆う養生シートを実物大の城門写真シートに張り替えることで、工事現場のイメージアップ及び景観の向上に努めています。
また、二の丸南門前では、保存修理の状況を紹介する写真パネルを掲示しています。
写真シートおよび写真パネルは、仮設足場が撤去される11月頃まで設置しておりますので、弘前公園にお越しの際にはぜひご覧ください。
▽弘前城二の丸南門西面(令和4年4月25日撮影)
▽弘前城二の丸南門 修理状況写真パネル公開
▽弘前城三の丸追手門南面(令和4年4月21日撮影)
【お問い合わせ】都市整備部公園緑地課 弘前城整備活用推進室(電話:0172-33-8739)