(会見者: 葛西憲之 市長)
平成28年も残すところ、今日を含め4日となりました。記者会の皆様には、この1年間、市政の発展のためにご協力いただいたことを感謝申し上げます。また、年が明けた平成29年も変わらぬご理解・ご協力をよろしくお願い申し上げます。
最初に、ベトナムBRGグループによるりんごフェア報告についてです。
ベトナムへの日本産りんごの輸出は、ベトナム政府による植物検疫の規制によって、平成23年以降、輸出できない状況が続いておりましたが、農林水産省とベトナム当局による協議の結果、平成27年9月にベトナム向け日本産りんごの輸出が可能となりました。
そして、今年3月にベトナムの財閥系企業「BRGグループ」が弘前市を訪問した際、会長のグェンティガー会長と私が懇談し、平成28年産りんごのベトナムへの輸出と、同グループ傘下のスーパーマーケットでの販売について、意見交換を行いました。
その後、9月にグループ副社長が当市を訪問され、今年の12月より、グループ傘下のスーパーで、りんごの販売イベントを実施するので、ぜひ出席して欲しいと招待があり、グループの熱意に感銘を受け、私がイベントのオープニングセレモニーに出席することとなりました。
りんごの販売イベントは、12月18日より一週間に亘り、グループ傘下の大型スーパー「BigC」と「Intimex」で実施されました。
私は、りんごを輸出したキタエアップル株式会社、及びBRGグループと業務提携をしているみちのく銀行とともに、12月17日から19日にかけて訪問し、オープニングセレモニーへの出席やメッセージ発信を行い、高品質なりんごを大いにPRしてきました。
また訪問の機会を捉え、生産者の代表である「つがる弘前農業協同組合長」も加わり、日本の農林水産省にあたる「ベトナム農業・農村開発省」の大臣や、駐ベトナム日本国大使への表敬訪問を行いました。
現在ベトナムへのりんご輸出は、園地を登録する必要があり、また有袋栽培に限るなど、様々な規制があるため、今後のりんご輸出拡大に向けて、無袋栽培の輸出を認めるなどの規制緩和に関する協力を、大臣及び駐ベトナム日本国大使へ要請してきました。
今回の、表敬訪問における意見交換の状況や感触については、年明けに、農林水産省に伝えに行きたいと考えています。
市では、ベトナムをりんごの有望な輸出先であると捉え、今後も県や関係団体と連携を図り、様々なチャネルでりんごが輸出、販売されるよう、輸出促進に繋がる取り組みを行ってまいりたいと考えています。
市では、さくらまつり、ねぷたまつり期間中の宿泊施設の不足が、以前から課題となっており、観光客などから「宿泊ができれば、是非その時期に行ってみたい。」という声が少なくありませんでした。
これに対応するため、今年度、国からガイドラインが示された「イベント民泊」を来年の両まつり期間中に実施します。
イベント民泊とは、多くの人が集まるまつりやイベント時に、宿泊施設の不足が見込まれる場合、その地域の自治体があらかじめ自宅提供希望者を募集し、要件を満たした希望者に対して、自宅を提供いただくよう要請し、そこに観光客が宿泊するという新しい宿泊の仕組みです。
イベント民泊は、業として行うものでないため、一軒のお宅で年に1回しか宿泊の受け入れができないなど、いくつかの要件がありますが、宿泊場所の確保のほか、空き部屋の有効活用、交流人口の拡大、滞在時間の増加による観光消費の拡大などの効果も期待されます。
今回は試行として実施し、その実績や、効果を精査して、今後の展開を検討したいと考えています。
自宅提供希望者の募集受付は、年明けの1月10日から1月末までを予定しています。
詳細については、市のホームページや広報ひろさき1月15日号との同時配布というかたちで各町会長へ募集要項をお送りしますので、各町会での回覧に供していただきますようよろしくお願い申し上げます。
記者会の皆様にも、この取組みの周知にご協力いただきたいと思っています。
最後に、この1年を振り返ってみますと、今年は全国的に見れば、熊本地震をはじめとして、大変大きな災害があった年だったと思います。被災された地域の皆様には心からお見舞い申し上げます。
ただ、当市の場合は、今年は大きな災害に見舞われることなく、おだやかな1年だったというように思っています。
印象に残っていることは、なんといっても、市民が、そして県民の皆さんが心待ちにしていた、県内では29年ぶりの開催となるプロ野球1軍戦が決定したことです。
1軍戦の決定。これは、今まで、各団体や市民の皆様と一緒になって交渉を続けた成果だと思っています。この、地元「はるか夢球場」でのプロ野球の開催により、当市の試算では、単年で約1億5千万円の経済効果が見込まれており、メディアへの露出などの宣伝効果も踏まえると「はるか夢球場」がもたらすその波及効果は、非常に大きなものがあると考えています。
岩木地区では、10月にNPO法人「日本で最も美しい村」連合に入会することができました。
「岩木山を背景に広がるりんご畑と田園風景」と「お山参詣」などが高く評価され、岩木地区が質の高い観光地であるというお墨付きを頂きました。
現在、世界にアピールできる「美しい村・岩木」をテーマにフォトコンテストを開催しています。応募の締め切りは1月27日となっていますので、岩木地区で撮影した自慢の写真をお寄せください。
同じく10月には、28年の長い歳月をかけ、流域自治体悲願の「津軽ダム」が完成しました。
これまで、台風や集中豪雨による洪水、そして近年、頻発していた農業用用水をはじめとする渇水対策等に苦慮して参りましたが、津軽ダムの完成により、これらが解消されるものと大変大きな期待を寄せています。
今後は、治水、河川環境の保全、かんがい用水、水道用水、工業用水の供給、さらに発電の六つの目的を持つ多目的ダムとして、流域の八市町村に、多大な恩恵がもたらされるものと確信しています。
11月には、日本の近代建築の旗手で、ル・コルビュジエの弟子である前川國男のいわゆる前川建築を公的施設として利活用している当市を含む8自治体により、「近代建築ツーリズムネットワーク」を設立しました。各地域が持つノウハウ・人材の共有やPRツール、イベントを共同企画し、前川建築を含む国内近代建築を観光資源としてさらに活用したいと考えています。
弘前城本丸石垣修理事業においては、工事そのものを観光資源化する新たな価値を創造し、昨年は「天守曳屋」を大勢の方々に体験していただき大盛況となり、全国への情報発信・宣伝効果も図ることが出来ました。
今年は「石曳き体験」や「解体石垣番号付け記念体験」などのイベントを開催し、多数の参加者から好評を得られ、先人が残した史跡を後世へ継承していくことの大切さを実感していただきました。
来年は、いよいよ本格的に石垣の解体に着手します。様々な工事関連イベントを通して石垣修理の新たな魅力の向上を図る施策に取り組んでいきます。
季節の移り変わりとともに本丸石垣の表情も変化していきます。その様子を見届けに、弘前公園に何度でも訪れていただきますようお願い申し上げます。
そして、公共施設に関連して、先日うれしいニュースが舞い込みました。この度、第11回 日本ファシリティマネジメント大賞における最優秀ファシリティマネジメント賞を受賞しました。
この賞は、ファシリティマネジメントの実績で大きな成果をあげた事例やファシリティマネジメント普及に功績のあった事例を表彰するもので、その対象は、自治体に限らず、民間事業者を含めた幅広い範囲を対象としており、そのうち、特に優れた活動におくられるのが最優秀ファシリティマネジメント賞になります。
ファシリティマネジメントの視点から経営の取組みが問われるもので、市庁舎の改修もその一例ですが、市長就任以来、組織的・計画的な取組みをしてきたこと、人口減少を見据えた下水処理場の統合や弘前城周辺の文化財施設等の活用と継承を図り魅力向上に寄与してきたことなど、持続可能な自治体経営を目指すため、ファシリティマネジメントに取り組んできたことが総合的に評価されたものです。
私は、市長就任前から、公共施設の老朽化を初めとした様々な問題に対応していくことを使命と考え、ファシリティマネジメントの取り組みを進めてきました。
今回の受賞を励みに「市民に愛され親しまれる公共施設を次世代に受け継いでいく」という取り組みを継続してまいりたいと考えています。
また、今年は合併10周年を迎えた区切りの年でもありました。
来年は更なる10年を、そして、その先の未来を見据え更なる飛躍に向けた新たなスタートの年でもあります。
今後も「子どもたちの笑顔あふれるまち 弘前」を目指し、「オール弘前」体制で、様々な事業に取り組んでまいりたいと考えておりますので、皆様の一層のご理解とご協力をお願いいたしまして、私からの挨拶といたします。
新中核病院についてお尋ねいたします。先の12月議会で市のほうが新中核病院の運営には主体的に関与すると答弁されまして、その論拠、「足場」として「区分所有」という概念を持ち出されたかと思いましたが、この区分所有の考え方をお尋ねします。
①区分所有は新病院の改修工事や運営にかかる費用を市が負担する考え方でよいのか?そういう方向で国立病院機構側と協議するということでしょうか。
②その場合、費用負担は掛かった全体額の一定の割合を設定するのか、もしくは今までの市立病院に関わるところを見定めて、上限額を定めるつもりでしょうか。
③さらに、新病院が津軽地域で緊急医療を担うという性格上、他の7市町村も関係することと思いますが、その場合はそれぞれのコミットを求めるためにも、ある一定の費用負担を求めるのかお尋ねします。
市としましては、この地域の課題であります救急医療の安定的な運営と、地域医療資源の充実・確保のため、このたびの中核病院整備構想の実現に向けて、しっかりとした決意を持って取り組んでいます。
限られた人数の医師が、複数の病院で働いている現状では、医師や医療スタッフにかかる大きな負担は避けられません。
そこで、大規模な病院を整備して、そこに医療スタッフを集約し、働く人たちの負担をできるだけ軽減しながら、高度な医療を提供する仕組みを作ろうとするのが、今回の中核病院整備構想であり、弘前市を中心とする津軽地域においては、ぜひとも必要であると考えて、関係機関と協議にあたっています。
また、この協議が進められる期間におきましても、市立病院を利用される皆様には、これまでどおり安心・安全な医療を提供することを念頭に、病院職員の意見にも耳を傾けて、不安が広がらないよう配慮しています。
なお、ご質問のありました「区分所有」につきましては、市の関わりのひとつの方向性として考えていますが、費用負担の方法等も合わせて協議しているという状況であります。
今の段階でより具体的な形で、お示しすることはなかなか難しいということをご理解いただきたいと思います。
イベント民泊の件ですが、民泊というと外国人にも門戸を開く形になるかと思います。治安の問題、ごみ出しの問題など、外国人の方を受け入れるとそういった問題も出てくることもあると思いますが、そのあたりはどうお考えでしょうか?
確かに見ず知らずの人を泊めるのは、抵抗がある方もいらっしゃるかと思います。しかし県外の方、あるいは外国の方と楽しく交流ができるメリットもありますので、受け止め方としては、自宅提供者と宿泊客双方が協力していただけるような環境ができていくものと考えています。ごみの出し方などの具体的なこととなりますと、受け入れてくれる方と、宿泊者がしっかりと話し合いをする必要があると思います。
構想されているのは、期間中の完全な貸家スタイルなのでしょうか。ホームステイ的なものも含むのでしょうか?
基本的には空き部屋などで考えています。募集に関しても、貸し手側で条件を決めて、日本人に限るとか、1人、2人などと示すこともできます。実際はご自分で募集する以外は仲介事業者を介して募集しますので、さまざまな受け入れの際のトラブルや保険も含めて、市としましては実績のある仲介事業者と連携して実施していこうと考えています。
イベント民泊のターゲットについて、日本人や東アジアの方など、市としてターゲットとしているものはあるのでしょうか?
試験的な運用とは承知しておりますので、どのくらいの場所、空き部屋など、イメージしているものがあるのか、現状としてわかる範囲でよいので教えてください。
基本的には、まずは30件程度でやりたいと考えています。
我々が検討しているものとしては、例えばJCとか他の地域とつながりがある人たちが、このような仕組みを活用して、普段お付き合いがありますので、さくらまつりに来たいけれども来られないというようなことへ対応するなど、どのようなやり方をすれば、より成果があがるかなどを考えつつ、まずは新年度トライアルでやってみて、今後課題や効果を検証していきたいと考えています。
ターゲットは特に考えていませんが、受け入れをする側の意向もあると思いますので、それも含めて今後考えていきたいと思います。
行政としてのバックアップの仕方と具体的にどのようなことをするのか教えてください。また、担当課はどこになるのでしょうか。
担当は観光振興部の観光政策課です。
基本的には国から示されているガイドラインもありますので、市としましては制度設計や仲介事業者とのしっかりとした枠組みを作ることに取り組んでいきます。
仲介事業者は不動産業者ではなく、JCなど、半公的機関のようなものを想定しているのですか?
交流する人たちとして想定しているのは、そういうネットワークがある人たちを考えていますが、仲介事業者は民泊の仲介サイトを現に運営している事業者を想定しています。
イベント民泊は国のガイドラインが示されていますが、県内では弘前が、いの一番に取り組んだと考えてよいのでしょうか?
県内では今年「五所川原立佞武多」で初めて実施されました。東北では福島県南相馬市で「相馬野馬追まつり」、宮城県で「ツール・ド・東北」、九州の福岡市では「ライブイベント」、などの事例があるようです。
国でも、実施事例を取りまとめして、自治体等に情報提供していくこととしています。
BRGグループの関係で、年明けに農林水産省に行かれるということですが、相手は決まっているのでしょうか?
今、日程調整中ですが、私は実務レベルに直接お伝えすると考えておりまして、その辺のベースのところで考えています。
ファシリティマネジメント大賞についてです。
県内では県に続いて2例目とのことで、市長は、県庁在職時代にずいぶんファシリティマネジメントに携われていたと思いますが、県もだいぶ長い取り組みが評価につながったと拝察しているのですが、あのときも市長は関わっていらっしゃったのでしょうか?
実際、私が中心になってやっていたのはアセットマネジメントだったのですが、ファシリティマネジメントについては、確か、庁内ベンチャーで進んでいたと思います。私は顧問格で入り、相談を受けていたという状況で、直接入って指導していたというよりも側面からバックアップしていたということです。そういう意味で、そういった取り組みが、私の当市での取り組みの背景にあったのは間違いないです。
県と市と2つ受賞をされて、何か特別な思いは?
アセットマネジメントでも賞をもらっていますし、ファシリティマネジメント、インハウスエスコという形などで、こういった施設運営に関わるさまざまな取り組みをずいぶんやって来ましたが、そういったことも背景に、熱心に長期間にわたって取り組んできたことの成果が今出てきたと思います。