川島織物セルコン(京都)の織物工場に広げられた市民会館の緞帳(上)、既存緞帳を基に描かれた復元図(下)[緞帳の左側:下手側]の構図が裏返し状態に描かれています。この復元図を織り機にセットし、これを基本に緞帳の復元が進められました。
奥に見える幅の広い機械は緞帳を織るための機織り機(はたおりき)で、市民会館の緞帳を製織する機織り機はさらに奥にある「綴織大機 2号機」(つづれおり おおはた 2ごうき)で伝統工芸士によって行われました。
復元図の色部分には、既存緞帳に使用されていた色の番号が書き込まれています。
棟方志功の緞帳「御鷹揚げの妃々達々」に使用されている基本色は30色が確認され、詳細な分析の結果、この基本色の組み合わせにより合計272色の色糸が確認されました。それらに併せて、「染色・定着・撚り」の工程が進められ製織用の色糸が制作されました。
試験的に制作された色糸の見本。
復元された色糸・全272色。
試験的に復元された色糸を使用して製織したものと、旧緞帳を並べ比較してみました。その色の鮮やかさに「感嘆のため息」です。製織にあたっては、既存緞帳が90度変角され製織されていたことから、今回の復元作業においても同じく90度の変角により製織が進められ、確実な復元が図られました。
川島織物セルコン(京都)の織物工場で行われた緞帳の復元過程です。1枚目の写真は、昭和39年当時に緞帳製織に携わり、今回の復元作業にも中心的役割を担った井上氏です。井上氏によると、折り目1つ1つを正確に数え、確認しながらの工程は非常に神経を使うが、棟方志功の緞帳の復元に関わることができて幸せだとお話しておりました。
製織機「綴織大機2号」の裏側の写真です。90度の変角により織られているため、横に巻き取られている状態です。このあと、構図などの詳細検査を受けてから、緞帳の裏打ち、防炎処理加工等の工程を経て完成となります。
織りあがった緞帳落款部分。上の写真が新調、下の写真が旧緞帳です。
上の写真が新調、下の写真が旧緞帳です。
復元された緞帳の寸法、色糸、構図、折り目等について詳細な検査を実施しました。色の違いは歴然です。この後、全体的な構図を安定化させるため裏面へ布の貼り付け、端部の折り込み、裏地の縫い付け、防炎処理などの加工工程を経て完成となりました。
昭和38年、棟方志功の直接の配色指定により、原色と中間色(パステルカラー)を背景に、金糸、銀糸により織りこまれた弘前公園の「鷹」、白色と黒色により織り込まれた「妃」は50年前の姿に復元され「津軽の春夏秋冬」を表す緞帳は、まさに市民会館大ホールの顔となります。
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